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【信州わかもの企業発掘隊】どんな難しい加工でも決して”諦めない”「株式会社一之瀬製作所」にお邪魔しました!
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こんにちは!外部ライターのたけなかです。
塩尻市のNPO法人MEGURU・松本商工会議所が実施する「短期取材型インターンシップ」に参加し、企業の魅力を探るべく会社見学や社員さんへ取材を行ってきました。
今回私が紹介するのは、「株式会社一之瀬製作所」。あらゆる業界で使われる生産装置の部品の製造を主とし、微細な加工を得意としている企業です。
経営者の方々がとても快活で、あたたかい会社でした!
工場見学
金属の加工は、基本的に丸棒状の材料をカットし、その丸棒を回転させて刃物に当てることで削っていったり、ドリルで穴をあけたりして加工するそうです。NC旋盤での加工は「ろくろで陶器を作るようなもの」だと、波田工場の三原課長にわかりやすく説明してもらいました。
また、MCという機械では刃物が縦横の方向に動いて切削することができ、より複雑な形に金属を加工することができます。
この工場には5軸のMC2台を含む、NCやMC53台が設置されています。
1台数百万~数千万する機械が53台!?!?これだけでも業績の良さが伝わってきますね……

一之瀬製作所では、部品の加工は基本的に一人で一部品を担当し、一次検査まで行うそうです。
一次検査では部品に傷がついていないか、バリ(加工で残った金属片など)が残っていないかを確認します。
二次検査は検査専門の社員さんが行い、1万分の1の精度の三次元測定器や、30万分の1の精度の顕微鏡などを用いて寸法や形状に問題がないかを検査します。
三次元測定機は測定に誤差が生まれないようにするため、なんとエアーで浮かせてあるそうです!こういった細かい配慮の積み重ねで、製品製造に欠かせない高精細部品がつくられるんですね。
経営者インタビュー
経営者の一人である一之瀬新太郎さんに、一之瀬製作所についてのお話を伺いました。
一之瀬製作所の歴史・事業内容について
創業からこれまでの経緯を教えてください!
一之瀬製作所は昭和47年(1972)の創業であり、当時は今の高精細部品の少量生産ではなく、もっと量産が主要事業でした。しかし、時代が流れるにつれてお客様側から精細な部品を求められるようになりました。当時そういった高精度な部品に興味が出てきていたということもあり納入する部品が徐々に微細化していき、今のように高精細部品の生産が主要となりました。
会社の事業内容について教えてください!
一之瀬製作所は、液晶画面やLED、半導体などを製造するための部品を作っていて、他社に発注することができないような超高精度が要求される金属部品加工を行っています。10μm(マイクロミリメートル)の加工も可能で、これは髪の毛の10分の1程度の大きさです!
髪の毛の10分の1!?!?そんな微細な加工があの大きな機械でできるなんてびっくりしました!
こういった高精度な加工を可能としたことで、お客様への技術提案を行うこともあります。
また、近年では近隣の学校へ出前授業を行うこともあり、最近だとオリジナルのヤジロベエなどを用いて授業をしました。
地域が誇るべき技術力を発信することで地域とのつながりも深まり、地域から愛される会社になっているんですね!
BCPを重視
最近では自然災害対策として、BCPを重視した会社体制を推進しています。
BCPとはBusiness Continuity Planの略で、災害が発生した時にも事業が滞りなく行えるとともに社員の働き口を維持するための方策です。一之瀬製作所は、工場を松本市波田と 松本市島内(本社併設)にもっており、別々の岩盤の上に工場を設けることで地震への対策を行っています。一つの工場が全壊したとしても、もう片方の工場で部品を作ることができる、というようになっているそうです。
一之瀬製作所は工業製品を作るための部品を多く扱っているため、弊社が操業停止してしまうとその製品が作れなくなり、世界中に影響してしまいます。しかし、あまりにも高精細なため他の会社に製作を依頼するということが難しいため「一之瀬製作所の操業を止めない」ということが最重要になっています。
現在も本社を別の場所に移転するという計画を立てており、数年後にはより安全で災害の影響を受けにくい工場ができる予定です!
チャレンジ精神
一之瀬製作所では客注で部品を作る以外にも、社員が自主的に工作機械を用いて「チャレンジ作品づくり」をしています。
なんと、業務時間内に時間が空いたら、会社にある工作機械や材料を使って自主的にモノづくりをしているそうです!チャレンジ作品づくりが一つのモチベーションとなり、社員さん一人一人の技術力向上につながっているそうです。社員さんによると、「休日も作品づくりのための加工方法を考えたり、時には参考書を買って読み込んだりしている」とのこと。楽しみながら個々の技術を上げられるのはとても面白い取り組みですね!

「「あきらめない」」
一之瀬さんが入社してからここまでの経緯と、これまでで一番嬉しかったことを教えてください。
会社を創業したのは祖父でした。創業から数年後に、経営の能力が高かった一之瀬龍太現社長に交代しました。私は学生のころスポーツをしていましたが、ケガをしたため諦めざるを得なくなりました。その後長い期間悩みましたが、結局会社に入社することにしました。毎日金属を加工していて、ある日「金属の加工って面白いな」と思い、加工方法を色々と調べるようになり、楽しいと思うようになりました。
なるほど、楽しさに気づくことができたことが一つの転機だったんですね。
一番嬉しかったことというと、15年ほど前にお客様からとても高精度な依頼をされ、加工方法を色々と試行錯誤して納品をした後にお客様から電話があり、非常にいい出来だと褒められたことですね。普段お客様の感想を聞くことは滅多にないので、電話をもらって非常にうれしかったことを覚えています。
一之瀬常務によると、一之瀬製作所には「あきらめない」社員さんが非常に多いそうです。極めて難しい形状や厳しい寸法公差の製品であってもあきらめず、どういった順番で加工すればいいのか?どのくらいの回転数にすれば加工できるのか?など試行錯誤することで、独自の技術が積み重ねられているそうです。

社員さんへインタビュー
次に、今年で入社11年目となる矢口佳輝(やぐち よしき)さんにインタビューをさせていただきました。
まず、入社した経緯とこれまでの仕事などを教えてください。
高校の会社見学が入社のきっかけでした。「この会社がいいな」とピンときて入社しました!
入社してからは11年間ほどですが、これまでMCによる加工やワイヤ放電による加工を担当してきました。ワイヤ放電加工では、0.2mmの真鍮製の糸に電気を通して金属の形を変える加工です。
会社の雰囲気を教えてください!
先輩たちが非常に優しく、とてもいい会社です。作業する上で失敗することは当たり前だ、ということで、これまで失敗したとしても怒られたことがありません。私自身も後輩に怒らないようにしています。
これまでで一番うれしかったこと、大変だったことはなんですか?
新しい機械を担当させてもらったときが一番うれしかったです。先輩たちに認められている、ということを実感しました。
大変だったことは……やっぱり入社したばかりのときに、操作方法や加工方法など覚えることが多かったことですね。すぐには覚えられず、失敗してばかりでした。それでも怒らずチャレンジさせてもらえたため、諦めずに仕事を覚えることができました。
学生へのメッセージ
これから就職活動をする学生に向けて、メッセージをお願いします!
「働く」とはなんなのか、ということを考えてもらいたいです。働く中で自分自身は大きく成長していきます。これからの人生では、自分とは違う視点や考え方をもつ人にたくさん会うことになると思います。そういった人たちと仕事をする中でマナーや接し方、メンタルを成長させられると思います。
「働く」ことでお金を得られますが、お金に替えられないたくさんの経験を得られます。
働くということは、他者のためになることです。今まで経験したことのないことを任せられることもあると思いますが、諦めずにどんどんチャレンジしていくことが一番大切かなと思います。
まとめ
一之瀬製作所は、社員のみなさんが非常に生き生きと、また社長や常務たちと仲良く話していたのがとても印象的でした。途中で社長がわざわざ時間を取って挨拶をしにきてくださりましたが、社長は非常に温厚で、楽しそうな空気を持つ人でした。こういった社長の雰囲気もあって会社全体の雰囲気が良くなっているのだろうな、と感じました。
ほかにも、ここには書き切れないほどたくさんのためになる話をしていただきました。みなさんも機会があれば是非こういった短期インターンに参加してもらいたいです!

※短期取材型インターンシップは令和5年関東経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業で実施しました。
企業情報
社名 | 株式会社一之瀬製作所 |
本社所在地 | 長野県松本市島内小宮510 |
会社設立年月 | 1972年11月 |
資本金 | 1000万円 |
社員数 | 45人 |
Webサイト(オンラインショップ) | https://ichinose-seisakujo.bsj.jp/ |