長野県の学生向けお役立ち記事まとめ 【企業取材】あの懐かしいお菓子の舞台裏。学生ライターが見た“技術”と“想い”【アトリオン製菓】
【企業取材】あの懐かしいお菓子の舞台裏。学生ライターが見た“技術”と“想い”【アトリオン製菓】

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【企業取材】あの懐かしいお菓子の舞台裏。学生ライターが見た“技術”と“想い”【アトリオン製菓】

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こんにちは!ナガノの学生広報室ライター、あずさです。

今回から始まる新企画「ツギtoつぐ」は、信濃毎日新聞さんとのコラボ連載!
次の時代を見据えて新しいチャレンジをしている企業や、事業を受け継いで成長を目指す経営者たちを、私たち学生ライターが取材して紹介していきます。

記念すべき第1回は、誰もが一度は食べたことのある“あのお菓子”を作っている会社にお邪魔してきました!

ヨーグレット、ハイレモン――

懐かしくて親しみのあるお菓子のルーツが、実は長野県須坂市にあるって知っていましたか?
それが今回ご紹介する「アトリオン製菓」です。

今回はこの会社のルーツをたどるべく、約70年前に前身企業である「明治産業」で働いていた山崎さんと現在の社長・山下さん、そして入社したばかりの新入社員・小林さんの3人にお話を聞いてきました。

世代も立場も違う3人の言葉から浮かび上がるのは、会社に受け継がれてきた“技術”と“想い”。
ひとつの企業に込められた歴史の深さと温かさを、ぜひ感じてみてください。

山崎さん(中央)、山下社長(右)、小林さん(左)

本日はよろしくお願いします!まずは、皆さんの簡単な自己紹介からお願いします。

山崎好子と申します。小布施町の出身で、アトリオン製菓の前身である「明治産業」で2年ほど働いていました。

山下奉丈です。神奈川県出身で、丸紅を経て2023年からアトリオン製菓の社長を務めています。

小林咲月です。須坂市出身で、今春に新卒で入社しました。現在はいろんな部署をまわって、日々勉強中です!

今日はどうぞよろしくお願いします!

当時の仕事と現在の仕事

山崎さんがこの会社で働いていらっしゃったのは、いつ頃のことなんですか?

20歳くらいのときですから、1953年頃ですね。2年間ほどお世話になりました。

山崎さん

それは創立から間もない時期ですね。当社は1945年創立で、53年は「新興産業株式会社」から「明治産業株式会社」へと社名を変更した第一次転換期にあたります。当時はどんな製品を作っていたのでしょう?

ビスケットとキャラメルですね。私はキャラメルの包装・箱詰めを担当していました。紙に包まれたキャラメルが機械で流れてきて、それを一つずつ箱に詰めていく仕事です。1箱20個入りで、当時の価格は20円くらいでした。シール貼りや計量など、作業は分担制でしたよ。

実は私も入社研修で「ヨーグレットミニ」の包装作業を経験したんですが、昔と今で工程にあまり差がなくて驚きました。とにかくスピードが速くて……。

小林さん

私は手を動かすのが好きだったので、職業安定所でこの仕事を紹介されたときは嬉しかったですね。確かに忙しかったですが、慣れるのも早くて、あまり注意されることもありませんでした。

本当にすごいです。私は何度も注意されました(笑)。当時の勤務時間はどれくらいでしたか?

朝8時から夕方5時まででしたよ。

なるほど、それは現在と変わらないですね。

今もまったく同じ時間で働いています。時代が変わっても、そのあたりは引き継がれているんですね。

変わるものと変わらないもの

山崎さんの頃と今では時代背景も働き方もずいぶん違うはずなのに、不思議と共通する部分もあるんですね。

そうなんです。たとえば今、うちでは「ヨーグレット」など20〜30種類のお菓子を製造していますが、商品ごとに製造方法が異なるため、どうしても人の手が必要になる場面が多いんです。そこで活きるのが“ちょっとしたコツ”です。それが仕上がりの良し悪しを決めるんですよ。

山下社長

そのコツは、自然に生まれてくるものなんでしょうか。

偶然や工夫の積み重ねですね。経営危機を乗り越えて今の姿があるのも、多くの人たちの努力があったからこそです。山崎さんのような方の働きぶりを見て、学んだ人もきっといたと思います。

実は、私の母もこの会社で働いていたんです。それで私も入社して…こうして山崎さんとお話しできて、人のつながりで会社が続いてきたことを感じます。

私はこの会社に、楽しかった思い出がたくさんあります。これからも皆さんに頑張ってほしいですね。

皆さんと一緒に記念撮影!

アトリオン製菓の工場にお邪魔しました!

アトリオン製菓さんのお話を聞いていたら、実際に工場の様子を見たくなってきました。

では、行ってみますか?

えっ、いいんですか!? ぜひお願いします!

長野県須坂市にあるアトリオン製菓の工場

向かったのは、長野県須坂市にあるアトリオン製菓の工場。ここで、あの「ヨーグレット」や「ハイレモン」が作られています。

工場見学用の白衣に着替えました! あらためて、よろしくお願いします!

私も準備万端です。それでは、ご案内しましょう。

工場見学用の服に着替え完了!

工場に一歩足を踏み入れた瞬間、あのなじみ深い甘酸っぱい香りがふわっと広がります。

うわぁ、ヨーグレットの香りですね!懐かしくて、なんだかワクワクします。

今ちょうど、ヨーグレットを製造しているラインですね。見えないところで生産効率も日々改善していて、ライン設計にも“コツ”が詰まってるんですよ。

誰かが気づいたコツが、こうやって今に生かされているんですね。

整形されて流れてくるヨーグレット

変えることと変えないこと

取材を通じて思ったのは、アトリオン製菓が大切にしているのは、“変えること”と“変えないこと”のバランスなんだなと。

おっしゃる通りです。たとえば職場環境。夏の暑さは過去と比べ物にならないものになっていますよね。社員の働きやすさを重視して、空調設備や飲料マシンなども整えています。

一方で、ヨーグレットの箱の形は、昔から変わっていませんよね。

あれは簡単には変えられません。「上から白、青、真ん中に二本の帯。あの箱を見たらヨーグレット」とすぐわかる。それがブランドの力。この夏発売した限定デザインでも、その構成は守りました。見た目や形は、信頼や安心感につながるんです。

箱に入れられて流れてくるヨーグレット

なるほど…じゃあ、新商品開発にもかなり慎重なんですね。

ブランドの世界観を壊してはならない、という意味では慎重になります。例えばですが、「ハイレモン煎餅」と聞いたときと、「ハイレモンまんじゅう」と聞いたとき、皆さんにとって期待感が高まるものは何か、逆にちょっと違うなって思うのは何か、それをしっかり検証する必要があります。慎重に吟味しながら、やると決めたら大胆に。その動きのメリハリをしっかり意識する必要があります。

ヨーグレットミニの梱包作業の様子

あっ、これって小林さんが言っていた「ヨーグレットミニ」の包装作業ですか?ものすごい速さで、でもきっちり詰められていく…!

そうなんです。全国に向けて量産する商品であっても、機械で対応できないところは人の手で丁寧に対応する。80年前から変わらない「現場」の姿です。

明治産業からアトリオン製菓へと変遷する中で、時代の流れに合わせて「変えてきたこと」と、ブランドの核として「変えずに守り続けてきたこと」との違いが、はっきりと見えてきたように感じます。

「岡学園トータルデザインアカデミー」の学生たちと一緒に作ったオブジェ

入口にあるこのオブジェ、可愛くて目を引きました!

これは長野市の「岡学園トータルデザインアカデミー」の学生たちと一緒に作ったもので、少し前まで大阪・関西万博にも展示されていたんですよ。トータルデザインアカデミーさんとは、商品パッケージのデザインなどでもコラボさせていただいています。

すごい…!地域との連携も大切にされているんですね。

はい。長年親しまれた「明治産業」という社名から「アトリオン製菓」に変わったからこそ、地元とのつながりをさらに重視しています。皆さんに見ていただける高速道路沿いの看板を新調したり、地元の花火大会に協賛したり、地域に根ざす企業としての活動はこれからも続けていきます。

想いを未来へつなぐ

100周年に向けた想いを語る山下社長

今日、山崎さんのお話を聞いた後で、社長としてあらためて感じたことはありますか?

根っこの想いは昔も今も変わらない、ということですね。

“想い”の継承ですね。

はい。技術や仕組みは進化していくけれど、「より良いものをつくりたい」という気持ちはずっと続いています。いま私たちがやっている仕事も、いずれ「誰かが始めてくれたおかげで今がある」と思ってもらえたらいいなと思います。

名が残らなくても、行動が会社を形づくっていくと。

まさにそうです。その積み重ねが、他にはない“うちの強み”になります。そして今、私たちはさらに、90周年、そしてその先の100周年に向かって歩んでいるところです。

100周年を迎えるとき、どんな会社でありたいと思いますか?

「今と同じ姿」ではいられません。社会の変化や働く人の価値観に合わせて、進化していく必要があります。でも、何があっても「大切なこと」はぶらさない。そんな企業でありたいですね。

最後に、この記事を読む学生に向けて、メッセージをお願いします。

長野にいながらも、日本全国に影響を与える仕事ができます。うちは、ロングセラー商品を守り育てる一方で、新しいことにもどんどん挑戦する社風があります。挑戦が好きな人、自分の手で何かを生み出したい人に、ぜひ来てほしいです。

山下社長、小林さん、あずさの3人で記念撮影!

今回の対談を通じて感じたのは、「人の手で積み重ねられてきた想いは、時代が変わっても色あせない」ということ。

山崎さんのお話からは、1つ1つの仕事に向き合う誠実さと、ものづくりの楽しさが伝わってきました。そして、山下社長の言葉からは、そんな想いを受け継ぎ、次の時代へとつなごうとする強い意志を感じました。

昔と今がつながり、今と未来がつながっていく。「変えてきたこと」と「変えずにきたこと」。その両方が、アトリオン製菓という会社の強さなのだと思います。

小さなお菓子に込められた、大きな想い。
それは、昔も、今も、そしてこれからも――変わらない。

企業情報

会社名アトリオン製菓株式会社
本社所在地長野県須坂市高梨288
創業1945年(前身:新興産業株式会社)
代表者代表取締役社長 山下奉丈
主な商品ヨーグレット、ハイレモン、パチパチパニックなど
従業員数約200名(2024年時点)
Webサイトコーポレートサイトはこちら

この記事を書いた人

あずさ

信州大学経法学部総合法律学科3年