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【ツギtoつぐ vol.4】「家業を継ぐ」と「M&Aでつなぐ」。形は違えど志は一つ。地域の文化を次世代へ“進化”させる姉弟の物語。
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こんにちは!学生ライターのあつやです。
信州に息づく企業や経営者の皆さんの「想い」を、僕たち学生の視点で紐解いていく連載企画「ツギtoつぐ」。第4回目となる今回は、長野市出身の素敵な姉弟にお話を伺ってきました。

一人目は、歌手やデザイナーとしてのキャリアを経て、父が創業した飲食店を継ぎ、独自の感性でその価値を「進化」させている塚田あゆさん。
二人目は、東京を拠点にM&A(企業の合併・買収)を通じて、数多くの事業承継と企業の成長を支援している塚田壮一朗さん。
「親の事業を継いだ」姉と、「誰かと誰かをつなぐ」選択をした弟。一見すると対照的なお二人ですが、お話を伺ううちに、どちらも「地域の文化や歴史を未来へつなぐ」という、とても熱く、共通した志を持っていることが見えてきました。
取材場所は、善光寺のほど近く、2024年夏にオープンした「戸隠つきや 門前店」。山小屋のような温かい空気の中で行われたインタビューを、会話形式でお伝えします。
「父の味」を東京で進化させ、再び長野へ
本日はよろしくお願いします。まずはお店のことから伺いたいのですが、あゆさんは最初から「家業を継ごう」と考えていたのですか?
いえ、実は最初から明確な意識があったわけではないんです。私は高校から東京の音楽科へ編入し、卒業後は歌手としてデビューしました。その後、グラフィックデザイナーとして起業するなど、両親とは全く違う道を歩んでいたんです。
そこから、どのように今の形になったのでしょうか。
私は会社立ち上げと同時の2018年、当時長野で両親がやっていた「四季の味つきや」を東京の西麻布に出店する形で両親と共にお店を開きました。どんな形で私達の味わいを伝えたいか考えた結果、長野のみずみずしい素材、自分達のルーツである戸隠の味わい深い蕎麦、四季折々の山菜を提供し、長野という土地と人を繋げていきたいと思いました。東京の暮らしが長くなっていましたが、本物の長野の味に触れられる場所が無かったんです。周りの人を信じて一生懸命打ち込んでみる気持ちも大事だったと思いますし、今でも多くの方々に支えられています。
このお店(門前店)も、山小屋のような雰囲気で素敵ですね。
温もりがある質感を大事にイメージしました。この店は、かつて老舗の呉服店だった場所をリノベーションして、山小屋風にしました。父が作ったお店を、ただ同じように続けるのではなく、スタッフ皆の経験を踏まえて「進化」させることを意識しています。だから「継ぐ」というよりは、「父と一緒に走っている」という感覚に近いですね。

M&A業界への道 ― 経営者の孤独と「出口」の重要性
一方で、壮一朗さんはM&Aの専門家として活動されています。家業を継がなかった経緯を教えてください。
父の姿を見て育ったので、経営者は身近な存在でした。いつか自分も経営者になりたいと考え、まずは経営者と仕事ができる会計事務所に入社したのですが、そこでビジネスの現実を知り、父の営む飲食業の難しさを痛感したのが正直なところです。
そこからどのようにM&Aの世界へ入られたのですか?
新卒で入社した成迫会計事務所で中小企業の「出口問題」に向き合う中でM&Aの必要性を感じ、その後、人材紹介業界などを経て2016年に日本M&Aセンターへ入社、2022年に「株式会社NEWOLD CAPITAL」を設立しました。社名の「NEWOLD」には、「温故知新」……つまり企業の歴史を尊重し、新しい価値を創造するという思いを込めています。単なる売買ではなく、会社が築いた文化を未来へつなぎ、成長を支援することが私のやりたいことです。
会社を引き継ぐことの難しさについて、壮一朗さんはどう分析されていますか?
今はただ継ぐだけでは生き残れない、厳しい時代です。市場の変化に合わせて、ビジネスモデルそのものを「進化」させる力が求められますが、その力を持った人材を家族の中から見つけ出すのは容易ではありません。また、株式の価値が高すぎて従業員が買い取れないといった「資本」の問題もあります。だからこそ、M&Aという「第三者と手を組む」選択肢も、ポジティブに捉えられるべきだと考えています。

M&Aは「心と心の対話」 ― カルチャーを尊重するということ
M&Aと聞くとドライなイメージを持つ人も多いですが、壮一朗さんが最も大切にしていることは何でしょうか。
その会社が作られてきた背景や歴史、そして何より「カルチャー」を知り、尊重することです。その会社「らしさ」を失うM&Aは成功とは言えません。
壮一朗さんが定義する「カルチャー」とは、具体的にどのようなことですか?
私は「その会社に人が集まる理由」だと定義しています。給料などの条件だけでなく、商品が好き、空間が好き、仲間が好き……といった、目には見えないけれど魅力に感じるものがカルチャーです。それを理解せずして、企業の価値を正しく測ることはできません。
あゆさんのお店が持つ「カルチャー」は、どのような点にありますか。
子どもの頃に家族と山菜採りをした記憶といった、長野の自然の恵みが生活の中にある原体験が、今の店の「文化」の核になっていて、料理だけでなく空間も含めて、その文化を体験してもらいたいと思っています。
父の「味」に、姉は「デザイン」や「空間」という要素を加えてカルチャーを進化させている。それに共感した人々が集まって店が成り立っているんです。M&Aはよく「結婚」に例えられますが、お互いにリスペクトし、理解し合える仲間たちが最後には生き残ると信じています。だからこそ、私たちは双方が深く理解し合えるような、丁寧な対話の場をつくることを何よりも重視しています。

信州の未来を灯す ― 次世代への「英断」を後押ししたい
事業承継において、今最も大切だと感じることは何でしょうか。
「会社をこうしたい」という強い想いです。創業200年を超えるような会社の支援もしていますが、後継者の方々は「家業を閉ざしていいのか」という悩みと「このままでは壁にぶつかる」という危機の板挟みになっています。
それを解決する手段の一つが、M&Aなのですね。
そうです。会社がいい形で進化するのであれば、それは先祖を裏切ることにはなりません。従業員のために、時代に合わせた変化と捉えてほしい。そんな経営者の「英断」を後押ししたくて、昨年は小説も執筆しました。誰か一人の背中を押すきっかけになれば嬉しいですね。
私も、地域の文化を守り続けていくためには、時代に合わせた変化を恐れず、互いに話し合い、協力し合える関係を作っていくことが大切だと感じています。
最後に、僕たち学生にメッセージをお願いします。就活を控えて「大企業なら安泰かな」なんて考えてしまうこともあるのですが……。
最近の学生さんは「働きやすさ」だけでなく、一周して「のめり込める環境」を求めていると感じます。地方には都会にない素晴らしい資源がたくさんあります。条件だけで選ぶのではなく、自分がハマれる、楽しめる場所をぜひ探してほしいですね。
何が正解か分からない時代だからこそ、自分の「楽しい」という感覚を信じて、いろんな大人と話し合ってみてください。そこから道が見えてくるはずです。
今日はありがとうございました。「継ぐ」ことも「つなぐ」ことも、結局は「人を想い、未来を信じること」なんだと分かりました。僕も熱中できるビジョンをこの街で見つけられるよう、これからも活動を続けていきたいです!

取材を終えて
今回のインタビューを通じて、僕が抱いていた「事業承継」や「M&A」のイメージが180度変わりました。
お父様の想いを大切に守りながら、あゆさん自身の感性で新しい息吹を吹き込む姿は、単なる「継承」を超えたクリエイティブな挑戦なのだと感じ、胸が熱くなりました。また、壮一朗さんが語るM&Aも、単なる資本の移動などではなく、その会社が持つ「魂」や「カルチャー」を未来へつなぐための、深いリスペクトに基づいたお仕事であることを学びました。
信州の大切な資源を次世代のビジョンへと繋げていくお二人の熱い想いに触れ、僕自身もこの街の未来に対する大きな希望を分けていただいたような気がします。自分たちの世代が、この素晴らしい灯をどう受け取り、次へ繋いでいくべきか、これからも真剣に考えていきたいです。
企業・店舗情報
株式会社NEWOLD CAPITAL
| 本社所在地 | 東京都渋谷区渋谷2丁目11番5号 クロスオフィス渋谷メディオ |
| 設立 | 2022年6月10日 |
| 役員 | 代表取締役CEO 栗原 弘行 取締役COO 塚田 壮一朗 取締役CSO 大野 智明 取締役CQO 岩木 保樹 |
| 主な事業 | M&A実行支援 経営幹部人材紹介 エキスパート活用支援 |
| 従業員数 | 76名(2025年9月末時点) ※派遣社員等含む |
| Webサイト | コーポレートサイトはこちら |
戸隠つきや 門前店
| 所在地 | 長野市長野桜枝町916-1 |
| 営業時間 | 11:30 – 15:00 17:00 – 21:00 |
| 定休日 | 毎週月・火曜日不定休 |
| 予約・お問い合わせ | 026-233-8028 |
| Webサイト | 公式サイトはこちら |